「今ココの価値」を放つコンテンツ


「今でしょ!」のセリフで一躍有名になり、マルチタレントとしても活躍する某予備校講師の方に、インタビューしたことがあります。
各界著名人に「好きな本」を紹介してもらうという雑誌の企画でした。
ビジネス書を挙げる人がいたり、写真集を挙げる人がいたり、週刊誌を挙げる方がいたり。人によって選ぶ本がまったく違い、とても面白いインタビューとなりました。
その講師の方が挙げたのは、芥川龍之介の文庫本。
さすが国語(現代文)の講師でおられます。特に、そこに収められている『トロッコ』が傑出した作品だとおっしゃいます。
インタビューの途中で、私はこんな質問をしました。
「では、この本はどんな場面で役立ちましたか?」
すると、講師の方は驚いたような顔をして、私を見つめました。
思わず私も驚いてしまいました(笑)。質問の意図が伝わっていないのだと思い、補足しました。
「この本を読んで、人とのコミュニケーションについて深く考えるようになったとか、家族との時間をより大事にするようになったとか、役に立ったことがもしあれば教えていただきたいのですが」
すると、講師の方はこうおっしゃいました。
「本は、『何かの役に立つこと』を期待して読むものではないですよ」
読むこと自体が体験・事件である
話を簡単にまとめると、「読んでいる瞬間を楽しむ」。本の役割は、まさにそこにあるというのです。
目からうろこが落ちました。
私は無意識のうちに、本を読むことに「何かを得る」「何かに役立てる」という価値を求めていました。
というか、その雑誌企画そのものが、その前提で成り立っていた。だって普通、そうですよね?
でも必ずしもそうではない。読むという体験自体が価値になる――。
もちろん、文学と、私がつくっているコンテンツとは違います。ニュースレターやウェブ記事は、読者に役立つ情報を届けることが大きな目的です。
でも、それだけでいいのかなとも思うのです。読んでいる時間そのものを楽しんでもらうことも大切にしたい。
例えば、インタビュー記事なら、取材相手の意外な一面が見えたり、思いがけない言葉に出会えたりというところに、読者は心を動かされるのではないでしょうか。
記事に添える写真もそうです。そのコンテンツにふさわしいものを撮りおろす。"もらい写真"はコンテンツの価値を下げます。私の写真の師匠はしょっちゅう、「まだ見ぬ一枚を撮れ」などと言ったものです。
コンテンツを通じて役立つ情報を届けるだけでなく、読むという「今ココ」の体験価値を届けられたらなと思います。
価値があるのは、そう――。今でしょ!
おあとがよろしいようで。




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