プロも知らない「原稿チェック」のワザ


発売された書籍に重大な事実誤認が見つかり、出荷・販売中止、回収が決まったというニュースが世間を賑わせています。
同じ業界にいる者として、冷や汗が出る思いがします。関係者や読者の皆さんに、これ以上の被害が及ばないことを願っています。
今回のできごとの詳しい原因は分かりませんし、私が語る立場にもありません。
ただ、原稿チェックには「やり方」があるので、その話をしたいと思います。
校正・校閲の入門書を読むと、基本的なプロセスが紹介されていますね。出版に携わる人なら、ぜひ一度は目を通しておきたいものです。
それに加えて、私自身が気をつけていることがあります。大きく二つあります。
ポイントを絞って見る
単に「間違いはないかな」という気持ちでゲラ(試し刷り)を読んでいるようでは、まだまだチェックが甘いです。
私の場合、脳内に「5つのアンテナ」を張るイメージでゲラを読みます。
① 誤字脱字のアンテナ
文字の打ち間違いや変換間違い。「自費出帆」「社長は語りませた」など。こういう誤字は比較的見つけやすいですね。「意思/意志」「保証/保障」「対象/対照」など、間違えやすい同音異義語は、一覧表にしておくといいです。
② 固有名詞・数字のアンテナ
間違えると影響が大きい部分です。「キヤノン」(×キャノン)、「ビックカメラ」(×ビッグカメラ)など、会社名には注意したいですね。人名も同様。名前の漢字や字体は、本人の公式表記や媒体のルールを確認します。数字は、ゼロとアルファベット「O」の取り違えや、桁の間違いなど。「米国の人口は約1億2000万人」のように馴染の数字(日本の人口)をうっかり書いてしまうことだって考えられます。
③ 表記統一のアンテナ
「お客様/お客さま」「子供/子ども」「様々/さまざま」など。媒体ごとに表記ルールが異なることもあるので、Excelなどで一覧を作っておくと便利です。
④ おかしな日本語のアンテナ
主語と述語が対応していない。能動態と受動態が不自然に混在している。「頭痛が痛い」のような重複表現など。文章として不自然なところがないか確認します。
⑤ 事実との相違のアンテナ
これはインタビュー音源などの一次資料に当たる必要があります。例えば「AさんはBと言った」と書いてある。でも本当にそう言ったのか、ソースを確かめる。書いたんだからソースがあるはずです!
誤字を探しながら(①)、特に固有名詞や数字、表記の揺れにセンサーを張り(②③)、日本語の不自然さにも気を配る(④)。そして、事実関係は資料と照合する(⑤)。そんなイメージです。
5つのアンテナを張りながら、ゲラを読むことはできます。
印刷媒体なら、もう一つやることがあります。
⑥ デザインのアンテナ
本来あるべきものと異なる書体が使われていないか。ショルダーやインデックス、ノンブルが抜けていないか、位置がズレていないか。本来はデザイナーさんなども確認する部分ですが、責任者=編集者は見なければなりません。もしライターさんがここまで気を配ってくれたら、発注者としてはうれしいですね。
ゲラを読んで①~⑤をチェックした後、⑥をチェックするという、二段階でやるのがいいと思います。
そして、もう一つ気をつけていることは……。
体調を整える
拍子抜けしましたでしょうか(笑)? でも、これは超~重要。
考えてみてください。
大リーガーの大谷翔平選手は、試合前日に明け方4時まで仕事をして、翌日、眠い目をこすりながら試合に臨むでしょうか?
臨まないでしょう!!
野球のプロフェッショナルが試合に向けてコンディションを整えるように、コンテンツ制作のプロフェッショナルも、仕事に向けて自分を整えたいものです。
ここで思い出すのが同じベースボールプレーヤー、イチロー選手のルーティン。
試合前の準備からバッターボックスに入るまで、決まった動作を繰り返すことで知られていました。
打席に入り、スタンスを整え、バットを立てて構える。あの独特の所作です。
原稿チェックにも、それくらいの心構えで臨みたい。十分に睡眠を取り、頭がすっきりしている時間帯を選び、集中できる環境をつくる。
プロなら、自分の仕事の精度を上げるために、できることはしておきたいですね。その方が気分もいいですし。
今ではAIが文章を書いてくれますし、原稿チェックもしてくれます。
でも、最終的に確認し、責任を担うのは人間なんですよね。そういう仕事をしましょう!
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