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屋久島とカバーヨ・ブランコと人口減少

  • 執筆者の写真: 中島洋一(株式会社ビートアンドライト代表)
    中島洋一(株式会社ビートアンドライト代表)
  • 2023年10月23日
  • 読了時間: 3分

20年くらい前の古い話で恐縮ですが……。鹿児島県の屋久島を訪れた時、ウミガメの産卵地として有名な永田浜(ながたはま)という場所を訪れました。夜訪れたので、懐中電灯を持って浜を散歩しました。


直後に知ったのですが、その砂浜はウミガメを保護するため、夜は勝手に入っていけないことになっており、特に懐中電灯のような人工的な光源は「ウミガメを刺激する」ということで使用が禁止されていました。「それでもウミガメの産卵が見たい」という人たちのために、ウミガメの産卵を見学する有料ツアーも用意されていました(今もあるようです)。


かくして、呑気に夜の砂浜を歩いていると、監視員の人が走ってきて「懐中電灯はやめてください!」と注意されました。まったく……。事前に何も調べず訪れた、こちらに落ち度がありました。反省。


一方、心の中に腑に落ちないものが残りました。


自然と向き合う、対峙する――。これは今や、容易には得難い「贅沢な体験」なのかもしれませんが。「自然」と「人」との間に「監視員」のような人や組織が入り込むとしたら――監視員の管理の元でウミガメの産卵を見学するとしたら――それは”本当の意味でウミガメの産卵を見た”ことにならないのではないか? お金を払って用意された「ウミガメ産卵ショー」を見ている感じにならないか? 自然と対峙する体験にはならないのではないか? 子供の頃から自然まみれで生きてきた田舎者の自分は、そう感じてしまいました。


※念のためですが、自然保護には手間暇もお金もかかるため、有料で見学ツアーを実施するのは合理的で素晴らしい、誰もが納得のいく取り組みだと思います。


なぜこんなことを思い出したのかというと近頃、「こんな装備で山に登るなんて無謀だ」、みたいな意見が聞かれるようになったからです。


それはその通りなのですが、一方で、誰にも指図されず「自分」と「自然」がじかにぶつかり合う体験をする余地も、世の中にあってほしいと思うのです。例えば、書籍『Born to Run』でカバーヨ・ブランコが、たいして水も食糧も持たず、地図さえ持たず、何日間も”ただ愉しむため”に、荒涼とした岩石砂漠を走り続けたように。


今はオーバー・ツーリズムという問題もあるでしょう。だとしたら、日本の人口が減ったらそういうことが、おおっぴらに、また可能になるでしょうか。


というか、クマが山から降りてきて人を傷つけたり、鹿が人里近くにやってきてマダニをまき散らしたりということが、すでに起きているわけですが。将来の日本では、イヤというほど人間は自然と対峙しなければならなくなるかもしれません――。しかし、それはそれで興味深いと思う気持ちも正直あります。


まぁ、人間は勝手ですよねというお話でしたw

 
 
 

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